1950年から2000年にかけての公立高等学校司書の図書館実践ー教科との連携と「図書館の自由」の視点からー
これは2012年度 東京大学大学院教育学研究科 生涯学習基礎経営コース 高橋恵美子さんの修士論文である。85ページ余の論文なので目次を転記して「文献案内」とする。
http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/53608/1/H25_takahashi.pdf
1 はじめに
2 1950年から2000年までの学校司書の状況
2.1 学校図書館は図書館である
2.2 1950年から現在までの学校司書配置の変遷(高校を中心に)
2.2.1 学校司書の配置率、正規・常任職員率、資格の有無(1950〜2010)
2.2.2 学校司書の資格の有無、学歴(1950〜2010)
2.3 学校司書の状況
2.3.1 学校図書館発足時から学校司書の名称で呼ばれるまで
2.3.2 1960年前後及び1960年代の学校司書の状況
2.3.3 1970年代、1980年代の学校司書の状況
2.3.4 1990年代の学校司書の状況
3 レファレンス・サービスの研究から教科学習との連携へ
3.1 教科学習との連携を考える視点
3.2 学校司書のレファレンス・サービス(1960〜2000)
3.3 レファレンス・サービスの蓄積から教科学習との連携へ(1975〜1985)
3.4 『学校司書の教育実践』(1988)と『図書館よ、開け!』(1990)
3.5 教科との連携の広がり(1990〜2000)
4 「図書館の自由」をめぐって
4.1 「図書館の自由」と学校図書館
4.2 愛知県、千葉県の禁書問題
4.2.1 禁書問題の発端と愛知県の調査
4.2.2 愛知県禁書問題の波紋
4.2.3 千葉県の禁書問題とその後の議論
4.3 貸出方式をめぐって
4.3.1 貸出方式をめぐる議論
4.3.2 個人情報保護条例と学校図書館
4.4 予約制度の導入
4.4.1 学校司書による予約制度の導入
4.4.2 「図書館の自由」との関わり
4.4.3 学校図書館問題研究会における実践研究
5 結論
5.1 学校図書館発足時から現在までの実践観および活動内容の変遷
5.1.1 学校司書の制度状況と図書館活動
5.1.2 学校司書不在期(第Ⅰ期)
5.1.3 学校司書・補助職員期(第Ⅱ期)
5.1.4 学校司書・自立期(第Ⅲ期)
5.2 最後に
参考資料
注
以上で「文献案内」とする。目次そのもので自分の欲しい情報があるかないか判断できると思うから、私の下手な説明は不要だ。ただ、以下に私の「雑感」みたいなものを付け加えさせてもらう。そのなかで著者の高橋さんに注文めいたことを言うかもしれないが、月とすっぽんほど経歴も見識も違う、そのすっぽんが言うことと、許してくださればと思う。
1.1950年から2000年までの50年間と期間を区切った研究(指導教官あたりから期間が長すぎるという声もあがっていた(67頁)ようだが)に注文をつけるのは、明らかにつける方が大間違いしているのだが、せっかくだったから、2010年まで延ばしていただきたかった。とくに3.「教科との連携の広がり」のところ、現在の姿が問題の核心だと思うからだ。『がくと』『学図研ニュース』を見て自分で調べなさいというところか。それにしても、「実践をWEBに」(イマイさん提唱)を痛感する。ついでに、『学校図書館』には、「教科との連携の広がり」関係記事はあまり掲載されないという指摘はあったが、『図書館雑誌』『図書館界』には触れていない。両誌は学校図書館を無視?
2.この論文を「公立高等学校司書教諭の図書館実践」と学校司書を司書教諭に置き換えて書くことができるのであろうか。出来る司書教諭の方がいらっしゃれば是非書いていただきたい。もちろん東大の修士論文でなくていい。公開性の高いブログ等の媒体でお願いしたいが・・・。論文筆者の高橋さんは「1.はじめに」のところで、「司書教諭についての研究はあるものの、学校司書についての研究はない」(趣旨)と書いておられるが、その「司書教諭についての研究」を具体的に示していない。「司書教諭が書いた研究」でも「司書教諭についての研究」でもいいのだが、具体的に知りたい。どなたか教えてください。
3.論文筆者の高橋さんに教えられ(論文全部が教えていただいていることなのだが)、「あっ」と思ったのが、学校図書館法第5条2項の「充て職」の問題だった。第5条1項と付則「当分の間」にばかりに目が行っていて、ここのところの問題を見逃していた。もともと「充て職」では無理だったのだ(2頁)。さあ、「どう改正するか」の問題にまでは踏み込むつもりも力もないが、肝心の「法の精神」が無視されていたり、法自体に無理があったりで・・・、学校司書法制化は、そのへんのところをどう処理していくのだろうか?