私論・高等学校図書館論 5

木も見て森も見て、鹿も見て山も見るのがよかろうと思う。
学校図書館を活発にするためには、「まず人を」という主張は理解できる。緊急性も理解できる。この主張は「木も見て森も見て、鹿も見て山も見るのがよかろう」の中の木であり、鹿なのだろうと思う。森と山を見失っては、道を誤るおそれがあろう。
森とは学校図書館の本当の姿であり、山とは学校図書館の本質的役割である。

学校図書館の本当の姿と本質的役割を探って、つぎのような「答え」の在り所を得た。

学校図書館法第1条には、「学校教育において欠くことのできない基礎的な設備」とある。
また、先の平成9年の「学校図書館法の一部を改正する法律」を通過させたときの衆議院の附帯決議では「学校図書館は次世代の知と生きる力を育む宝庫」と言っている。
国学図書館協議会の「学校図書館憲章」(1991)のなかにも、「答え」があるように思うが、文章としてとりだせない。表現が総花的でポイントが絞れていないからだ。
簡潔で、具体的に、例えば次のユネスコIFLA学校図書館宣言(1999)のように学校図書館の基本的働きを宣言してほしかった。
The school library provides information and ideas that are fundamental to functioning successfully in today’s information and knowledge-based society. The school library equips students with life-long learning skills and develops the imagination, enabling them to live as responsible citizens.
学校図書館は,今日の情報や知識を基盤とする社会に相応しく生きていくために基本的な情報とアイデアを提供する。学校図書館は,児童生徒が責任ある市民として生活できるように,生涯学習の技能を育成し,また,想像力を培う。(長倉美恵子・堀川照代共訳)
この訳文、私の先生の一人が訳しているが、真面目な先生が真面目に訳しているので、不真面目な私が不真面目に訳してみる。
学校図書館というところは、これからの情報化社会をうまいこと生き抜いていくためには、情報と知識というものが、ほんまの役に立つものなんだと、予め教えてくれるところなんです。学校図書館は、生徒たちに 一生を通して学んでいく技術方法を身につけさせるところでもあり、想像力をゆたかに働かす力をつけ与えて、一人前の社会人として生きていけるようにするところなのです」  (これ余計に分かりにくくなりました??)
あっと、一か所忘れていた。学校図書館問題研究会(学問研)だ。
学校図書館問題研究会は綱領のなかで、次のように述べている。
学校図書館は、平和な社会をになう若者を育てるために、資料提供をとおして、児童生徒が学ぶよろこびや読む楽しさを体験できるよう援助するとともに、すぐれた教育活動を創り出す教職員の実践を支えるという役割を持っている」と。

以上5か所を探った結果、私は、学校図書館の本質的役割を「ユネスコIFLA学校図書館宣言」の中に見つけたいと思う。先に原文と翻訳文さらに超拙訳の三点を記載したのは、そのためである。(できれば全国学図書館協議会の憲章を使いたかったのだが・・・)

次の引用は、その「学校図書館憲章」の一部である。
「学校は学習を構造的に改革し、児童生徒が自ら課題を発見し、情報を探索し、発表し、討論して、創造的に知識を自己のものとするような学習を展開することが至上の命題となってきた。この学習は、とりも直さず生涯にわたる自己教育の方法を会得させ、自学能力を高める教育を推進することにほかならない。このような教育が展開され、児童生徒の主体的な学習が保障されたとき、児童生徒ははじめて学ぶ喜びや楽しさを知り、学校は通わされる場から、進んで通いたい場へと再生するに違いない。この時期に、なお、児童生徒に知識を詰め込み、その記憶度をテストによって定着を図るような学習を学校教育と考えているならば、もはや学校は時代の要請に応えることはできない。」

憲章は、なぜ、この正鵠を射た「学校教育の本質理解」を学校図書館と直結させた表現の中に(できれば一つか二つのセンテンスの中に)取り込むことができなかったのか?惜しみて余りある。
ついでに「学校図書館憲章」のことに触れておこう。関係者の何%がこの憲章の存在を知り、問題が起こったときに、ここに立ち返っているのであろうか。関係者の拠り所となっているのであろうか。
たとえば、この憲章は、司書教諭や学校司書を考える指針を与えてくれるであろうか?
はだしのゲン」問題が起こったとき、考えるヒントをくれたであろうか?
(もう一つついでにSLAに小注文:「ユネスコIFLA学校図書館宣言」をホームぺージの資料の一つにぜひ追加して欲しい)

さあ、ここに森と山が表れてきた。授業の構造改革である。
(教育の構造改革と、こういうと問題が遠のき、具体性が消え、スローガン化し、無力化する)授業の仕方が変わらない限り、学校図書館は、本を読むことが好きな生徒の楽しみの場であり、受験のための自習室であり続けるであろう。先生には別に図書館はなくても困らないところであり続ける。
次の土日は休載、11月2、3、4日をお待ちください。誰も待ってないか!