レファレンスの回答は複数の資料で

今日は秋分の日、学校は休み。アルバイトも休みなので、この日記は、「余談」となる。

秋の詩を集めていて、改めて記事タイトルにあるようなことを思った。ヴェルレーヌの「落葉」をめぐってである。最初から、私の頭には『海潮音』の上田敏訳しかなかった。お客様にヴェルレーヌの秋を歌った詩を求められたら、これしか提供しなかったであろう。それは、大きな間違いだった。原詩か誰の訳をお求めなのか、お聞きすることから、始めなくては、ならなかったのだ。

Chanson d'automne
Paul Verlaine

Les sanglots longs
Des violons
 De l'automne
Blessent mon coeur
D'une langueur
 Monotone.

Tout suffocant
Et blême, quand
 Sonne l'heure,
Je me souviens
Des jours anciens
 Et je pleure

Et je m'en vais
Au vent mauvais
 Qui m'emporte
Deçà, delà,
Pareil à la
 Feuille morte.

上田敏

落葉

秋の日の
ヰ゛オロンの
ためいきの
身にしみて
うら悲し。

鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。

げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。


堀口大学

秋の歌

秋風の
ヴィオロン
節(ふし)ながき啜泣(すすりなき)
もの憂き哀しみに
わが魂を
痛ましむ。

時の鐘
鳴りも出づれば
せつなくも胸せまり
思ひぞ出づる
来(こ)し方に
涙は湧く。

落葉ならね
身をば遣(や)る
われも、
かなたこなた
吹きまくれ
逆風(さかかぜ)よ。

金子光晴

秋の唄

秋のヴィオロン
いつまでも
 すすりあげてる
身のおきどころのない
さびしい僕には、
 ひしひしこたえるよ。

鐘が鳴っている
息も止まる程はっとして、
顔蒼ざめて、
 僕は、おもいだす
むかしの日のこと。
 すると止途(とめど)もない涙だ。

つらい風が
僕をさらって、
 落葉を追っかけるように、
あっちへ、
こっちへ、
 翻弄するがままなのだ。

秋の歌

窪田般彌訳

秋風の
ヴァイオリンの
  ながいすすり泣き
単調な
もの悲しさで、
  わたしの心を傷つける。

時の鐘鳴りひびけば
息つまり
  青ざめながら
すぎた日々を
思い出す
  そして、眼には涙。

いじわるな
風に吹かれて
  わたしは飛び舞う
あちらこちらに
枯れはてた
  落葉のように。


私のこの記事を含めネットに載せるときのミスがある。必ず、現物の提供が肝要。いや、現物でもダメだ。確かなテキストの選択が必要。選択できないときは、なるべくたくさんのテキストの提供をしなくてはなるまい。

つまり回答は、質問者が嫌になるほど多岐にわたることがあるのだ。というようなことを改めて思ったという余談である。